豊かな自然を守りたい。外来種問題が抱える複雑な事情を知る記事
ばらぬす/野生爬虫類画家
外来種と聞いて、何が思い浮かぶでしょうか。ブラックバスやアライグマ、ヒアリといった生き物の名前や農林水産業などへの被害、人間の都合で命を奪うやるせなさなど、様々あると思います。その中で、一般的にはあまり知られていないこともあります。
人の豊かで安全な暮らしのためには、外来種対策は必要不可欠。自然の深い部分を探っていく、複雑な外来種問題に果敢に取り組む3つの記事をご紹介します。
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ばらぬす
トカゲやヘビを中心に身近で小さな生き物の野生の姿を追う。山野で自ら観察・撮影した生き物の写真をもとに細密画を描き、グッズ化して販売。また、日本爬虫両棲類学会などの出版物のイラストも手掛ける。学生時代から環境教育に携わり、卒業後は国立公園内施設の管理運営などに従事した経験をもつ。
外来種は外国の生き物だけじゃない? ルールを知って関わる大切さ
龍谷大学の伊藤玄先生へのインタビューはまず、外来種の説明から始まります。「外来種とは、もともとその地域にいなかったのに、人間によって持ち込まれた生物の総称。(中略)もともと日本の野外にいた在来種であっても、本来の生息地ではないところで発見されれば、『国内外来種』と呼ばれます」。この国内外来種という存在は、海外から持ち込まれた外来種と比べると知られていないと思います。
記事ではこの国内外来種を含め外来種が放流される危険性について、具体例を挙げながら解説されています。野外で見つかった観賞用のメダカ、大阪府で見つかった福井県のタナゴ、身近でありながら影響が大きいアメリカザリガニ。どれもこのまま放置されてしまえば、元々いた生き物がいなくなってしまう可能性があります。その中で、アメリカザリガニの放流や販売を禁止する動きについて触れていますが、これは記事掲載約7ヶ月後の2023年6月に条件付特定外来生物という新しい枠組みで実施されました。通常の特定外来生物とは飼育が禁止されていないなどの違いがあります。
採集や飼育など生き物と関わるにはこうしたルールを守ることが大切で、ともすると億劫にもなってしまうかもしれませんが、伊藤先生は「生き物を飼うこと自体は、決して悪いことではありません。生き物を遠ざけ、無関心になってしまうことの方がよっぽど怖いことです」と語ります。現代の生き物との付き合い方を知り、自然を楽しみ関わっていくことが、地域の自然を守ることに繋がっていくのだと思います。
外来種が希少種……!法的な問題を抱えたオオサンショウウオ保護
世界最大級の両生類、オオサンショウウオ。日本には多くのサンショウウオが生息していますが、オオサンショウウオ以外はどれも手のひらサイズです。どうしてオオサンショウウオだけがこんなに大きいのか、京都大学の西川完途先生が成熟過程の観点などから解説しています。他には、長生き故の寿命を調べる難しさについて研究事情を交えながらの解説やオスが巣穴で約3ヶ月も世話をし続ける繁殖の様子、食用利用もされていた歴史など人との関わりも紹介されています。
そんな日本の固有種オオサンショウウオですが、一部の河川では中国から輸入された後に放流されたチュウゴクオオサンショウウオとの交雑が進み危機的な状況にあります。交雑を防ぐには駆除が必要ですが、チュウゴクオオサンショウウオも国際的に保護されている希少種で、日本では外来種であっても法的に駆除が規制されているのです。記事内で国内法を改正する必要性とその難しさが提示されていますが、記事掲載約3年後の2024年7月にチュウゴクオオサンショウウオや交雑個体などが特定外来生物に指定されました。しかし、9割以上が交雑個体という地域もあり、外来種が一度定着してしまうと対策が非常に困難であることが分かります。
伝統行事と生態系保全を両立した革新的手法
奈良にある興福寺が毎年4月17日に行う「放生会」では、生命の大切さを伝える儀式として寺に面する猿沢池に金魚を放していましたが、2020年からは猿沢池から事前に採集した魚を放すという方法に変わりました。この方法は、金魚を池に放すと外来種となり問題であることがSNS上で議論を呼び、その声を真摯に受け止めた興福寺が近畿大学の北川忠生先生に相談したことで始まったもので、伝統を守りながら生態系保全の観点からも問題のない革新的な方法として大変話題になりました。
ここで紹介する記事は、新聞でこの放生会の取り組みを知った小学5年生の岩下宗也さんが自由研究として北川先生に手紙を送ったことで実施された、北川先生とゼミ生の奥田さんへのインタビューレポートです。記事の中では、問題解決に留まらずより積極的な生態系保全に繋げるために考案された、様々な取り組みが紹介されています。
最初にご紹介した記事の通り、外来種の放流は大きな問題のひとつです。こうした好例が幅広く知られ参考となることで、生態系保全に繋がってほしいと思います。
外来種問題はそのひとつひとつに様々な事情があるので、その場の自然を深く知り、丁寧に根気強く対応していく必要があります。
こうした取り組みを知ることで、自然への理解が深まり、普段の身近な自然の見え方にも新たな視点や楽しみが加わります。そうして地域の自然への理解が深まることで、もし、いなかったはずの生き物が現れた時、沢山いたはずの生き物が減ってしまった時、いち早く気付いて行動できれば、難しい問題であっても解決できるかもしれません。
自然は都会でもどこにでも、その土地ごとの形で存在します。自然を楽しむことで日常に加わる彩りは、とてもいいものだと思います。
※「キュレーション記事」は、フクロウナビで紹介されている各記事の内容をもとに書かれています。紹介する記事のなかには、記事が執筆されてから時間が経っているものもありますのでご注意ください


