食と文化、食と科学、体のしくみ。「食」を通して関心が広がる記事

フクロウナビ編集部

食べることは生きていくうえでの基本。体をつくり、健康に大きな影響を及ぼすだけでなく、食べる楽しみがあり、人との交流に大切なものでもあり……。大学でも、食に関連がある多様な研究が行われている。今回は「食べること」を通してさまざまな分野に関心が広がる記事を紹介したい。

記事をおすすめした人

フクロウナビ編集部

日々さまざまな分野の研究成果や学術知に触れるフクロウナビ編集部員たちが、それぞれの興味や関心をもとにテーマを立てて、おすすめしたい記事を紹介します。

宴席の魚料理に文化あり、思想あり

めでたい席でふるまわれる食材というと、和食では「タイ」を思い浮かべる方が多いかもしれない。だが、中世の上流階層の儀礼や宴会、贈答でもっとも人気のある魚はコイだったという。味の良さに加え、「コイが神になって天に昇る」という故事があり、吉田兼好の『徒然草』にも“コイこそ天皇の前でさばく魚なので並々ならぬものだ”という意味のことが書かれていると、龍谷大学で日本の食文化史を研究する西村郁哉さんは紹介する。

食材は仏教の思想を反映するものでもあった。白色はハモ、赤色はカツオ、黒色はナマコ。仏教の世界観をあらわす五色の食材を使った献立だ。記事では室町時代から江戸時代の武家や皇族が食べていた魚や当時の魚選びについて、故実書などの文献をもとに紹介されている。世界中の食材が手に入る現代の日本だが、食材の背景にある文化や思想を知ると、さらに味わいが深くなりそうだ。

光を使って食品のおいしさを計測

スーパーなどの店頭で、果物の糖度表示を見かけることがある。食べずに甘さを測れるのは不思議だが、糖には近赤外線を吸収する性質があるため、近赤外線を果実に当てて透過する光の量を測ることで、果実に含まれる糖分の量を調べることができるという。

こうした食品の非破壊評価ではさまざまな波長の光を使い分けて、食品の成分や微細な構造を割り出すことができる。かつて台湾産のマンゴーを沖縄産と擬装した事件があったが、筑波大学の粉川美踏先生は「蛍光指紋法」と呼ばれる方法でマンゴーの産地を判別した。また、リンゴやナシの果実にレーザー光を照射し、その散乱度合いから果肉の硬さや食感を推定することにも成功したという。こうした評価方法は計測時間が短く、処理に手間がかかる廃液が出ないこともメリットだ。食品のおいしさの陰に、光の科学も働いている。

身近なのに全然知らなかった、お腹が鳴るしくみ

静かな環境で「グゥ~」とお腹が鳴る……。かなり恥ずかしいが、お腹が空いたら鳴るのは仕方のないこと。理由を深く考えたことがなかったが、そもそもどんなしくみでお腹が鳴るのだろうか。

近畿大学医学部の辻直子先生によると、空腹時の胃には90〜120分周期で「空腹時収縮」と呼ばれる強い収縮が起こり、この動きが原因で音が鳴るという。音の大きさや鳴り方は食べ物が通過する速度や胃の内容物などにより変わるが、音が鳴るのは胃が空になっていることの証明でもある。空腹時収縮を2回繰り返して、胃と小腸を空っぽにしてから食事をするくらいが消化・吸収にはいいのだそうだ。

記事ではなるべくお腹の音が鳴らないようにする工夫も紹介されているが、お腹の音はよほど異常な症状を伴わない限りネガティブに受け取る必要はない、と辻先生は言う。これほど身近な現象なのに、詳しい部分までは解明されていないというのも意外だ。

食べることは誰にとっても身近なことだけに、さまざまな分野に接するきっかけになりやすい。身近な事柄を入り口に、未知の世界との出会いを楽しんでいただけるとうれしい。

※「キュレーション記事」は、フクロウナビで紹介されている各記事の内容をもとに書かれています。紹介する記事のなかには、記事が執筆されてから時間が経っているものもありますのでご注意ください

キュレーション一覧へ戻る