知ればもっと自分と人に優しくなれるはず!生理の今と未来を見渡す記事

フクロウナビ編集部

女性にとって毎月やってくる生理は憂鬱なもの。「どうしようもない不調のひとつ」として片付けてしまっている人も多いのではないだろうか。でも、実際には個人の体調の問題だけでなく、社会や経済、教育・スポーツの現場、そしてテクノロジーの発展にまで影響を及ぼす大きなテーマだ。生理痛がもたらす経済損失、研究の進歩、女性アスリートが抱える課題、さらに広がるフェムテックの可能性まで。今回は生理の今と未来を科学的な視点から見渡す記事を4つ紹介する。

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フクロウナビ編集部

日々さまざまな分野の研究成果や学術知に触れるフクロウナビ編集部員たちが、それぞれの興味や関心をもとにテーマを立てて、おすすめしたい記事を紹介します。

気づかない間に生まれている1兆円もの損失

PMS(月経前症候群)や生理の話題をオープンに話せる人は少ないだろう。だからこそ「痛い」「辛い」とは伝わってきても、実際に生理が原因でどんな不利益を被っているのかは見えてきづらい。それどころか当事者である女性すらも「生理の不調は当たり前」と捉えて、不利益を自覚していなかったりする。

そんな無自覚から目を覚ましてくれるのが、近畿大学 東洋医学研究所所長であり、婦人科医の武田卓先生とフェムテック事業を展開する株式会社ILLUMINATEの代表・ハヤカワ五味さんの対談記事。武田先生によると、PMSの不快症状・⼼⾝の不調によって生まれる経済損失はなんと年間1兆円程度というから驚きだ。PMSや生理はもはや個人の問題ではなく、社会全体の問題なのだと考えさせられる。対談の中でハヤカワさんがいう「結局は知識」の言葉通り、まずは正しい情報と現状を知ることが第一歩になる。特に働く女性は必読の記事だ。

“たかが生理痛”の認識が思わぬ落とし穴に

前述した「知識」の一つとして、次は医学の記事を取り上げたい。多くの研究者が原因の解明と治療法の開発に取り組んでいるという子宮内膜症。千葉大学の甲賀かをり先生もそのひとりだ。

「生理痛はあって当たり前だから我慢しなきゃ」「生理痛ぐらいで病院に行ったら大袈裟なのかも」「婦人科は馴染みがないから行きづらい」そんな声も耳にする。けれど、その辛い生理痛の原因となっているのが子宮内膜症だったら…?

治療法の開発だけでなく、痛みを取り除くための臨床研究から公衆衛生学的な研究、HPVワクチンの啓発活動まで、さまざまなアプローチで「子宮内膜症からの解放」をめざす甲賀先生の話は、私たちに希望を感じさせてくれる。

女性アスリートが陥りやすい無月経

日本人女性の間では、痩せているのが美しいという価値観が根強く、無理な食事制限によって生理が止まってしまうケースも珍しくない。そして、同じことが女性アスリートの間でも起きている。

見た目が成績に影響する審美系の競技や、体重が軽い方が成績が伸びやすい陸上の中長距離競技では、選手本人や監督・コーチの意向で過度な食事制限を行うことも。それがきっかけで無月経を経験する選手は非常に多いのだとか。そんな状況に警鐘を鳴らすのが、東洋大学の林清先生と太田昌子先生だ。

太田先生は「スポーツの現場では『今、結果を出す』ことに囚われて、長期的視点の不足が指摘されることもある」と話す。競技に打ち込むのはすばらしいことだが、引退後も人生は続いていく。女性アスリートが健康を害することなく最高のパフォーマンスを発揮するための“コンディショニング”を数値化し、選手の状態を可視化しようとする東洋大学の取り組みには大きな意義を感じる。

「フェムテックって何?」を改めて考えてみる

最後に紹介するのは、成城大学で開催された「フェムテック」に関するシンポジウムのレポート記事。「フェムテック」という言葉を耳にするようになって数年、テクノロジーで女性の健康問題を解決する新しいサービスやプロダクトが広がり、市場も急速に拡大した。一方で、一過性のブームのような盛り上がりや「女性のため」と強調されることへの違和感もどこかで感じてしまう。

記事では、そんな違和感の正体と新しいテクノロジーがもつ可能性を登壇者3名が明らかにしてくれる。例えば、「フェムテックとして販売される商品には高価格なものが多く、買える人と買えない人が分断されている」と自治医科大学の渡部麻衣子先生は言う。

ポジティブな面ばかりが取り上げられがちなフェムテック。懐疑的になる必要はないけれど、中立的な記事を読むことで知っておきたい課題もあると気づかされる。フェムテックに興味がある方、これから知りたいと思っている方には、ぜひこの記事を読んでもらいたい。

「生理は辛い」それはなかなか簡単には変えられない事実だ。それでも、さまざまな大学でこれだけ生理に関する議論と課題解決に向けた取り組みがなされているということは、少なからず社会は変わり始めているのだろう。今回紹介した4つの記事が、生理を、そして自分と他者を優しく受け入れられるきっかけになればうれしい。

※「キュレーション記事」は、フクロウナビで紹介されている各記事の内容をもとに書かれています。紹介する記事のなかには、記事が執筆されてから時間が経っているものもありますのでご注意ください

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