恐竜の生態や進化など、さまざまなアプローチによる恐竜研究を楽しめる記事

フクロウナビ編集部

およそ2億3000万年前に姿を現し、1億6000万年の長きにわたって地球を支配していた恐竜たち。その強大な姿は多くの人々を魅了してきた。

かつては恐竜研究で世界の後塵を拝していた日本だが、全国各地での発掘も進み、恐竜新時代へと突入している。この流れの中で、2024年8月には全国初となる恐竜学部が福井県立大学で認可され、2025年4月に新設予定だ。

近年の研究では、恐竜についてどこまでわかっているのだろうか。恐竜の生態や進化、あるいは絶滅を引き起こした天体衝突など、さまざまなアプローチによる研究を紹介する。

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日々さまざまな分野の研究成果や学術知に触れるフクロウナビ編集部員たちが、それぞれの興味や関心をもとにテーマを立てて、おすすめしたい記事を紹介します。

映画『ジュラシック・パーク』にみる恐竜学の進歩

恐竜映画の金字塔『ジュラシック・パーク』。今なお人気でシリーズ化されているが、1993年公開の第1作に衝撃を受けた人は少なくないだろう。本物と見まがうようなCGはもちろんのこと、一定以上の年齢の人ならば、子供の頃に図鑑で見た恐竜の姿とずいぶん違うことに驚いたのではないだろうか。

『ジュラシック・パーク』では当時最新の学説に基づいた恐竜像が描かれているらしいが、専門家の目にはどう映っているのだろうか。現実的に、琥珀に閉じ込められたDNAから恐竜を現代によみがえらせることは可能なのだろうか。

『ジュラシック・パーク』を題材に、福井県立大学の柴田正輝先生が恐竜学や古生物学の魅力などについて解説する。

恐竜研究の歴史を変える「むかわ竜」の発見

日本における恐竜研究発祥の地といえるのが北海道大学だ。1934年、北海道帝国大学(当時)の長尾巧先生が、サハリンの白亜紀後期の地層から日本初となる恐竜の化石を発掘。「ニッポノサウルス」と名付けられた。

そんな北海道大学の恐竜研究の伝統を引き継ぐ研究者の一人が、小林快次(よしつぐ)先生だ。記事では、小林先生の研究チームが発掘した2体の恐竜を迫力ある映像で紹介。巨大な鉤爪を持つモンゴル・ゴビ砂漠の「デイノケイルス」と、北海道むかわ町で発見された新属新種の「むかわ竜」だ。かつて「日本では恐竜の化石は出ない」といわれていた時代を知っている世代ならとりわけ、むかわ竜の尻尾の骨の発掘から全身骨格の完成、そして「日本の竜の神」を意味する「カムイサウルス・ジャポニクス」と命名されるまでの16年の道のりに、感動を覚えるに違いない。化石の特徴をもとに恐竜の生態を推測しながら、小林先生は想像をはるかに超える生物進化の可能性について言及する。

世界初!胃に獲物が入ったティラノサウルス科の化石を発見

恐竜の食性については、化石の歯や爪の形状から肉食性または草食性が判断できるが、肉食恐竜が具体的にどのような種類の動物を食べていたのかを知るのは困難とされている。

恐竜化石の宝庫として知られるカナダのアルバータ州で2009年、捕食した獲物が胃に残る恐竜の全身骨格が世界で初めて発掘された。この恐竜はティラノサウルス科のゴルゴサウルスの幼体で、胃の中にはシチペスと呼ばれる小型恐竜の後ろ足2体分が残されていた。これまでゴルゴサウルスの成体については、胃のわずかな内容物や骨に残る噛み跡などから、大型草食恐竜のトリケラトプスなどを食べていてことがわかっていたが、今回の発見は、ティラノサウルス科の恐竜が成長に応じて食性を変化させるという仮説を裏付けるものだと、研究チームに所属する筑波大学の田中康平先生は話す。

なお、記事に掲載されているポッドキャストでは、田中先生がインタビューに答えて、より詳しく幅広い研究内容をざっくばらんに語っている。興味を持たれた方は視聴がおすすめだ。

恐竜絶滅を引き起こした天体衝突の痕跡を探せ

1億6000万年ものあいだ繫栄していた恐竜たちを絶滅に追いやったのは、今から6600万年前に起こった巨大隕石の衝突であるというのが現在の最も有力な説だ。

大規模な天体の衝突は、そのとき地球に生息していた生物たちを絶滅させてしまうほど多大な影響を地球環境に及ぼす。そうした天体衝突イベントに地質学の観点からアプローチし、地球の環境変動のメカニズムを研究しているのが九州大学の佐藤峰南先生だ。佐藤先生の調査対象は、国内外の古い地層である。天体衝突イベントが起こった年代の地層から天体由来の物質を探し出して解析し、地層に記録された環境変動を読み解いていく。

「天体そのものではなく、地層に焦点を当てるからこそ見えるものがある」と佐藤先生。遠い過去の地層の中に閉じ込められた天体のかけらには、広大な宇宙の歴史が刻まれているのだ。

恐竜は変温動物ではなく恒温動物、トカゲの親戚ではなく羽毛の生えた鳥の祖先。新しい知見により、恐竜の姿は日々アップデートされている。しかし恐竜について我々が知っていることはまだほんの一部に過ぎないと、前出の筑波大学・田中先生は話す。これから先もどんな大発見が飛び出すかわからない、恐竜研究はますます目が離せない分野だ。

※「キュレーション記事」は、フクロウナビで紹介されている各記事の内容をもとに書かれています。紹介する記事のなかには、記事が執筆されてから時間が経っているものもありますのでご注意ください

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