もっと本が読みたい人へ。海外文学の世界をガイドしてくれる記事

フクロウナビ編集部

本を読むのは好きだけど、「海外文学」と聞くと身構えてしまう――あなたもそのひとりだろうか。ドストエフスキーの『罪と罰』、ヘミングウェイの『老人と海』、カフカの『変身』のような“有名”作品は読んだことがあるけれど他はさっぱり、という人も多いだろう。海外文学(または、外国文学、ガイブン)は一般的に、もともと日本語以外の言語で書かれ、のちに日本語に翻訳された文学のことを指す。海外文学の世界は、広くて深い森のようだ。今回は、この森をガイドしてくれる記事を紹介する。

記事をおすすめした人

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日々さまざまな分野の研究成果や学術知に触れるフクロウナビ編集部員たちが、それぞれの興味や関心をもとにテーマを立てて、おすすめしたい記事を紹介します。

自分が本を選ぶのではなく、本が自分を選んでくれる

最初に、“プロのガイド”とも言える人に話を聞いてみよう。東洋大学文学部印度哲学科出身の豊崎由美氏は、海外文学などを幅広く紹介する人気書評家だ。

4歳ごろには『グリム童話全集』を読みはじめ、大学時代にはフィリップ・K・ディックのSF作品に夢中になったという豊崎氏は、「その時々の自分が楽しいと思える本を自分のペースで読むことが一番」とアドバイスする。自身も、難解なことで知られるジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』を初めて読んだときは「何が楽しいのかさっぱり」わからなかったものの、初挑戦から約5年後に「やっと書いてあることがわかるようになった」そうだ。

自分が本を選ぶのではなく、本が自分を選んでくれると豊崎氏は語る。どんな本がこれから私を選んでくれるだろう――そう考えると、なんだか少しワクワクしてくるかもしれない。

空前の韓国文学ブーム

ここから、いよいよ海外文学の森に分け入っていこう。ここ数年で急速に注目を集めているのは、韓国文学だ。朝鮮語、モンゴル語、満洲語を言語学の視点から研究している関西大学の松岡雄太先生は、韓国現代文学を代表する作家のひとり、キム・ヨンスの翻訳者でもある。

1970年生まれのキム・ヨンスは、軍事政権時代を経験した最後の世代の作家だ。作品に通底する「他者を理解することが本当に可能か」「過去のことがどこまで現在に結びつくのか」というテーマは、韓国のみならず日本でも多くの人の心をとらえている。その証拠に、松岡先生が翻訳した『四月のミ、七月のソ』『波が海のさだめなら』を含め、計7冊(記事公開時。2024年9月現在は8冊)が日本で出版されている。

松岡先生が翻訳を手がけるようになったのは、キム・ヨンスの来日時の取材アシスタントを引き受けたことがきっかけだそうだ。海外文学の翻訳・出版の舞台裏をのぞいてみたい人も、ぜひ記事を読んでみてほしい。

「フランス文学」ではなく、「フランス語の文学」

次に紹介するのは、フランス語の文学だ。そう、「フランス文学」ではなく、「フランス語の文学」である。

法政大学の廣松勲先生は、フランス語圏の文学を表す「フランコフォニー文学」を専門とし、なかでも「クレオール文学」とも呼ばれる文学、特に、カリブ海域諸島とカナダ・ケベック州のハイチ系移民の文学を研究している……この説明からだけでも、海外文学という森がいかに複雑で深遠かがわかるだろう。ヨーロッパ人による先住民の殲滅に始まる植民地支配の歴史を背景に、大事な何かを喪失し途方に暮れる精神状態「メランコリー」が主要なテーマとして立ち現れるのが、この地域の文学作品の特徴だそうだ。

廣松先生が記事中で挙げている作家のうち、すでに邦訳があるのはフランスの海外領土の一部に設置されたフランス海外県・マルティニック(カリブ海)出身のパトリック・シャモワゾーだ。興味を持った人は、彼の本から手に取ってみてはどうだろう。

「これを訳さずして死ねない」マグレブ文学

北アフリカの人たちもフランス語を話すことは、あまり知られていないかもしれない。チュニジア、アルジェリア、モロッコの人々がフランス語で書く「マグレブ文学」を精力的に翻訳しているのは、筑波大学名誉教授の青柳悦子先生だ。

もともとは文学理論が専門で、マグレブ文学には興味がなかったという青柳先生。ところが、仕事で初めてチュニジアに行ったことをきっかけに現地の作品の魅力にとりつかれ、「これを訳さずして死ねない」という熱い思いに駆られて翻訳を手がけるまでになったそうだ。記事の最後にあるおすすめの作品リストも参考にしてほしい。

青柳先生は海外文学を楽しむコツとして、「なに言ってるかよくわかんないけど、ま、いっか」と、いい加減な気持ちで読むことが大切だと語ってくれた。専門家にそう言い切ってもらえると、ちょっとホッとしないだろうか。

「海外文学は難しい」。そう感じることは確かにある。だから、「なんでわざわざ海外文学を読まないといけないの?」という疑問が湧くのは当然だ。実は、上で紹介した先生たち全員が記事のなかで、直接的または間接的にその質問に答えてくれている。でも、一番大事なのは、実際に本を読んで、あなたがどう思うかだ。さあ、冒険の準備は整った。今日は本屋に行こう!

※「キュレーション記事」は、フクロウナビで紹介されている各記事の内容をもとに書かれています。紹介する記事のなかには、記事が執筆されてから時間が経っているものもありますのでご注意ください

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